ブラックボックス連作

ブラックボックス連作とは

匿名で短歌を募集してひとつの連作にする企画です。過去に5回開催しました。

「真夜中のペヤング」(#1)

初回。タイトルもお題箱で募集して、それに沿った短歌を詠んでもらいました。

参加者

  • 泳二

  • 金子りさ

  • 深海 魚子

  • せしん

  • とわさき 芽ぐみ

  • 宮本背水(スライム)

  • ものかげ

  • .原井

  • さちこ

真夜中のペヤング

葉桜の葉に頬をよせ新緑の香のかぐわしき戦争の春

コウノドリ先生みたいになりたくはないけど夜は僕を呼ぶので

触媒のようなぼくですティファールがひゅーひゅーひゅーとなくだけの夜

ぐるんぐるんとけいの針がぐるんぐるんまわりつづけてぼくひとりきり

即席の麺の匂いがつかぬよう遠く離れて湯気を見ている

ペヤングの湯切りの音はとぼとぼとシンクでひとりの僕を曇らす

乱暴に唇づけられたことがないくちびるをてかてかに光らす

とっぷりと静かな深夜枠だからおひとりさまは誰もが孤独

立ちのぼる湯気になりたい熱湯になりたい水を薬缶に入れる

飲むあてのないコーヒーを淹れながら思う「そろそろ寝なきゃやべえな」

何事か成すには短く成さぬにはちょうどいい長さの今日でした

僕たちは一人ではない団地にはいつまでも光ってる窓がある

「いろいろなひと」(#2)

お題となる「人名」を募集し、それらを参加者にあみだくじで割り当てて詠んでもらいました。

参加者

  • 明太子ツナマヨ

  • せしん

  • とわさき 芽ぐみ

  • 鯵尾

  • 泳二

  • さちこ

いろいろな人

この星月夜もワクワクさんならばきれいな円に切り取るだろう

ポスターの隅から光る液晶を黒い目で見つめるオノ・ヨーコ

感情と表情筋の関係について教える講師トーマス

月面をひとり後ずさるマイケル・ジャクソンの目は少しさみしい

一歩ずつ近づき通り越してった男の背にはICHIROとあり

ちからわざで佐藤二朗の短歌詠む はるヲうりたい気分になって

黒柳徹子の声を思い出すことができない呪いをかけた

地下鉄はドラマを乗せて(#3)

3回目。連作タイトルだけを発表し、自由参加で詠んでもらった企画

地下鉄はドラマを乗せて

きみんちに行く時以外通らない 改札の向こう側のタバコ屋

「ジョバンニの切符を下さい。無かったら最も高い奴を下さい」

新しいいのちの元へたくさんのいのちを乗せる勤務を終えて

お互いをアンダースタンドぶりながら何駅も西へと乗り過ごす

メトロにて天道虫を見つけたよ おいで一緒に地上へ行こう

主人公ではないということだけはトンネル付近で気がつきました

タスクリスト(#4)

タスクっぽい感じの短歌を詠んでもらいました。

参加者

  • 茉城そう (@maso0805)

  • せしん (@seshinmitsushma)

  • 水梨 (@midori_green17)

  • 泳二 (@Ejshimada)

  • ひざみろ (@1ookat2)

  • ガイトさん (@VVNtankaLOVE)

タスクリスト

次の可燃ゴミの日までに生チョコと渡し損じた手紙を捨てる

どうしてもやらねばならないことでもないが猫の背中は何度でも嗅ぐ

ワッフルのくぼみに貯まる蜂蜜のせいにして全部ぜんぶかき出す

ベランダで煙草をふかすふりをして誰も見てない月を見上げる

傘立ての中に愛していたことを忘れられないバラ色が立つ

銭湯でいまはこっちの身体かと演技してから豪快に脱ぐ

バレンタインのためのタスクリスト

flask.io上に作成したタスクリストに匿名で短歌を投稿してもらい、それらを並べ替えて連作をつくろう!という企画でした(作品の募集は終了しています)。

バレンタインのためのタスクリスト

計画の流れを整理するために猫の背中はくりかえし嗅ぐ

春闘が始まるまでにかりそめの愛は質屋に入れて手放す

ママチャリで地球7周半を行きカカオバターを買い付けてくる

「チョコレートケーキ オーブン 使わない クックパッド」で検索をする

ワッフルのくぼみに貯まる蜂蜜のせいにして全部ぜんぶかき出す

丁寧にマスカラ乗せる(今日こそは好きと言わせる)快速に乗る

少しだけ嫌われにゆく 耳朶の穴に白々しく絡む息

待ち合わせ場所には5分前に着く どうせ遅れてくるはずだから

べた雪の降る駅前で待たされてとれかけのパーマ指に絡める

デートでもカレーうどんが食べたいし下着は地味なやつを着ていく

銭湯でいまはこっちの身体かと演技してから豪快に脱ぐ

ベランダで煙草をふかすふりをして誰も見てない月を見上げる

不自然な夜のLINEで元カノの名前を訊いてはぐらかされる

雪が降る予報の午前2時までに雪より白い花束を買う

返答によってはヤツを蹴り殺すためのヒールの先を磨く

ブラジルに高飛びを余儀なくされたときに備えてチケットを取る

花束を持ってあなたと再会し 笑顔で力いっぱい殴る

次の可燃ゴミの日までに生チョコと渡し損じた手紙を捨てる

想い出のカカオ畑を焼き尽くし跡地に愛の墓標を立てる

夏までにくびれをつくる ぴたぴたのニットワンピを着て行くために

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