2019年の自選五首を呟く

A面

セックスのせからはじまる生活という名前からして無理なやつ

とくにコメントはない。

ロリコンに春は来ないということの証明として佇む渚

「ロリコンに春は来ない」はコミックLOの表紙コピーからの本歌取り。

まほろばが動詞であったあの夏の名残りとしてのこれはまほろび

眠気や眠さのことをあえて眠みと呼ぶのに似ている。

だとすればこれがわたしの死兆星なんだな あはは 汚え花火

死兆星も汚え花火もある種のネットミーム。

水槽にさかなを容れて飼うようにたぶんこのまま付かない既読

顔本で繋がった推しにMessengerで送ったメッセージは、最初こそ返事が来たのだけれど、ミュートされてしまったのかもう既読が付かなくなった。8月に送ったスレッドは消してしまったけれど、12月に送ったスレッドは何かを確かめるように覗きに行ってしまう。そういう歌。

B面

もうだめだぼくはたべっ子どうぶつを死ぬほど食べて安らかに死ぬ

たべっ子どうぶつにとくに思い入れはない。

うんちには絵文字があっておならには絵文字がなくて春のそよかぜ

結句でお茶を濁している。

いついかなるときも正しいおこないの積み重ねができると思うなと吐き出すように夜のしじまが張り裂けていく

長い。

地縛霊としてバンドに明け暮れて今日も卒塔婆のあいだでねむる

この国で、地方で生きるというのは、土地という呪縛に縛られて生きることだと思う。これはそういう歌。

ドストエフスキーしずかに読み終えてここは出口のない子ども部屋

これは雰囲気があって上手いと思う。

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