虚無虚無プリン

もしも生まれ変われるなら、巷でマドゥンナと恐れられる峰不二子的な怪盗になりたい。青いデニムに白のタートルネックというラフな格好。ぴちぴちのデニムのヒップがエロい。あと、おっぱいがデカい。そんな美少女。狙うのは自宅警備員が一人だけ詰めているような、なんでもないふつうの部屋だ。

閉じっぱなしの錠をバンプキーで開け、真正面から入ってくる。当然、ものすごい勢いで見つかるが、まったく動じることはない。なかにいる人間とむしろふつうに話もする。ひとしきりお話して、ちょっと飽きたかなってころに出ていく。ふつうに現ナマが盗られている。とても鮮やかな手口だ。警備員はそのことに気づいても、かわいい女の子と話ができたことにほっこりして、あんまし憤慨しない。

警備員にはわからなくなる。彼の部屋にあるもののうちでもっとも高価なのは魔法少女や初音ミクの1/8スケールフィギュアだが、それらはちゃんと残っている。失くなったのは金だけで、だが、その金を奪った彼女は本当に実在したのだったか。会話の内容だって覚えていないのだ。それでも、なんだか幸せだったような気配だけが彼女のシャンプーの香りとごちゃ混ぜになり、まだ、微かに漂っているような気がする。

けど、俺はそういうのには永遠になれないんだ。ぴちぴちのレディースのデニムは履けない。すね毛だってある。何より、おっぱいがない。

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