ポッピング・シャワー、宇宙を語る

短歌条例

神さまが子どものころに駄菓子屋で買ったラムネに付いてたオマケ それがこの宇宙なのだと知ったとき、何だかすこし安心したの

ポッピング・シャワー博士はそう語り、インタビュアーに笑みをこぼした 若くしてノーベル賞を受賞した彼女は有村架純似の美少女だ シトロンの石けんの香をにおわせて少女のポニーテールは揺れる

我々の暮らす銀河は真夏日のいちょう並木のひこばえなのよ 閑静な住宅街に突き立ってみどりに燃えている知性体 言うなれば「ナルシシズム」の結晶ね それが時空を繁茂していて 三次元空間上の我々のエントロピーに作用してるの

新日本風土記のテーマ音楽が似合う英国式庭園で ユニクロのタンクトップを着こなした少女の声はよく木霊する シャワー氏は瞳の奥にみずうみがあるかのようで、そのまっすぐな視線にはインタビュアーを離さないある一定の重力がある

日焼けした純情という物質が通学路には偏在してて けどそれが偏在してる原因はいままでずっと謎だったのね 理論上それはおそらくヘンテコなこけしみたいな形をしてて わたしたちだけの夏祭りのさなかにだけ発生するはずだった

流星がどこかで落ちる 深海に沈みゆくかのように静かに 我々は歓談をする なにごともなかったふうな顔をしながら

グアテマラ天文台のレポートによれば、宇宙はラブコメディで 神さまはさびしがり屋の人類と塩基的にも同質だった 砂山を交互に攫うあの遊びだけが彼らの文明ならば この星は記憶の底の海の家 原始宇宙の対岸なんだ

月曜は可燃ごみの日だと語るシャワー博士が浮かべたえくぼ それを見たインタビュアーは天才に生まれなかった自分を恥じた

最終更新